「デザインを学びたいけど、どのツールから手をつけるべき?」
これは、デザイナーを目指す未経験者の方から最も多く寄せられる質問の一つです。現在のデザイン現場では、Photoshop, Illustratorといった定番ツールに加え、UI/UXデザインの主流となったFigma、そしてCanvaやノーコードツールのSTUDIOなど、多種多様なツールが使われています。
しかし、それぞれのツールには得意分野があり、学ぶ順番を間違えると「どれも中途半端で仕事に繋がらない」という状況に陥りがちです。
そこでこの記事では、現役デザイナーの視点から「グラフィックデザイン」と「Webデザイン」の分野別に、ツールの特徴と学ぶべき優先順位を整理しました。あなたの「なりたいデザイナー像」から逆算した、最適な学習ロードマップを提案します。
やみくもに学習を始める前に、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
「有名だからPhotoshop」
「流行っているからFigma」
という選び方は遠回りになる可能性があります。
例えば、ロゴやイラスト制作が目的ならIllustratorが必須ですが、Webサイトの画面設計ならFigmaが圧倒的に効率的です。
自分が作りたいもの、挑戦したい仕事の種類からツールを選ぶことが、最短ルートへの第一歩です。
習得が簡単なツールが、必ずしも高単価な仕事につながるとは限りません。
例えばCanvaは直感的な操作が魅力ですが、企業のブランディング案件などで採用されることは稀です。一方で、学習に時間のかかるPhotoshopやIllustratorを習得すれば、対応できる案件の幅は格段に広がります。
実務では、複数のツールをプロジェクトに応じて使い分けるのが当たり前です。
「Illustratorでロゴを作り、Photoshopで写真と合成し、FigmaでWebデザインに落とし込む」といった流れは日常茶飯事。各ツールの連携性を理解しておくと、学習効率も実践力も大きく向上します。
各ツールの特徴を一覧で比較してみましょう。
ツール名 | 料金(個人向け) | 主な用途・特徴 |
---|---|---|
Illustrator | 単体プラン: 3,280円/月 (年間プラン) | ロゴ・イラスト・印刷物制作の必須ツール。ベクター形式で、画像を拡大縮小しても劣化しないのが最大の特徴。デザインの基礎となる「形を作る」「文字を組む」を学ぶのに最適。 |
Photoshop | フォトプラン: 1,078円/月〜 単体プラン: 3,280円/月 | 写真加工・画像合成・レタッチの王道。Webバナー制作から本格的な写真編集まで幅広く対応。Web・グラフィック問わず、ビジュアルのクオリティを上げるために不可欠。 |
Adobe XD | ※現在、単体での新規購入は不可 (Creative Cloudコンプリートプランには同梱) | WebサイトやアプリのUI/UXデザインツール。プロトタイプ作成機能が特徴。近年はFigmaに主流が移りつつある。 |
Figma | 無料プランあり 有料プラン: 約2,400円/月〜 | Web・UIデザインの現行スタンダード。ブラウザ上で動作し、複数人でのリアルタイム共同編集が強み。コーディングを意識したデザインや、動的なプロトタイプ作成も容易。 |
Canva | 無料プランあり 有料プラン: 1,500円/月 (年払いなら1,000円/月) | テンプレートが豊富なオンラインツール。SNS投稿、プレゼン資料、簡単なバナー作成に最適。デザイン知識がなくても直感的に見栄えの良い制作物を作れる。 |
STUDIO | 無料プランあり 有料プラン: 590円/月〜 | ノーコードでWebサイトを制作できるツール。デザインから公開までをコーディング知識なしで完結できる。ポートフォリオサイトや小規模なサービスサイト制作に強い。 |
※料金は2025年10月時点のものです。プランによって機能が異なるため、詳細は公式サイトをご確認ください。
グラフィックデザインは、ポスター・チラシ・名刺・パッケージ・ロゴなど、紙媒体や印刷物を中心としたデザインを扱います。
- ロゴ制作、名刺、パッケージ、印刷物全般に対応
- ベクターデータを扱うため拡大縮小しても劣化しない
- 印刷業界ではほぼ必須ツール
デザインの根幹である「形」と「文字」を扱う力を養えます。印刷業界では必須のスキルです。まずはIllustratorから始めるのが王道です。
- 写真の加工やレタッチが得意
- 印刷物でもWebでも活躍
- Illustratorと組み合わせることで表現の幅が大きく広がる
Illustratorで作ったデザインに、写真などのビジュアル要素を加えて表現の幅を広げます。ポスターや広告制作には欠かせません。
- 雑誌や書籍、カタログなど「ページもの」に特化
- 長文テキストを美しく配置するための機能が充実
雑誌やカタログ、書籍など、ページ数の多い制作物(エディトリアルデザイン)を志すなら必須。長文を効率よく、美しく組むための機能が充実しています。

私自身もIllustratorから学び始めました。全ての機能を一度に覚える必要はありません。まずは基本的な描画ツールと文字ツールから触ってみてください。
Webデザインは、WebサイトやUIデザインを中心に扱います。
最近ではコーディング知識が不要でもデザインを実装できるFigmaが主流です。
- Webデザインのビジュアル作成に強い
- バナー、ヘッダー画像、サムネイルなどはPhotoshopが最適
- 写真の補正や合成はWeb案件でも必須
現代のWeb制作現場、特にチーム開発ではFigmaが共通言語となりつつあります。リアルタイムでの共同作業や、開発者へのデザイン共有がスムーズに行えるため、最優先で学ぶ価値があります。
- クラウド型デザインツールで共同作業に強い
- コーディングを意識したUI設計が可能
- 動的なプロトタイプも簡単に作れる
Webサイトを彩る画像素材の作成・加工には今でもPhotoshopが最適です。「バナーはPhotoshopで」といった指定も多く、汎用性が非常に高いツールです。
- ロゴやアイコンを作る場面で必要
- Webだけでなく、名刺やチラシなども依頼される場合に対応可能
Webサイトで使われる高品質なロゴやアイコンは、拡大縮小に強いIllustratorで作成されます。Web専門のつもりでも、 避けては通れないツールです。

以前はXDが主流の現場もありましたが、共同編集機能の強さから、現在はほとんどがFigmaに置き換わっています。
最近は「Canvaでデザインを学んで仕事にしている」という人も増えています。
「SNS運用代行」や「簡単な資料作成」など、デザインの専門性をそこまで求められない領域では非常に強力なツールです。プロのデザイナーを目指す上での学習優先度は低いですが、「副業の入口」として、または自身のSNS運用のために活用するのは非常に有効です。
Canvaは以下の点でとても優秀です。
- 無料で始められる
- テンプレートが豊富で初心者でも見栄えの良いデザインが可能
- SNS投稿や簡単なバナー、プレゼン資料作成に強い
- 実際に「Canvaを使ったInstagram投稿代行」などの案件も存在
しかし、本格的なブランディングや企業案件には向かないのが現実です。
理由は以下の通りです。
- 細かいレイアウトや色管理が弱い
- 印刷用の高解像度データに対応しにくい
- 独自性の高いデザインを作るのは難しい
そのため、Canvaはあくまで「副業の入口」や「自分のSNS運用に活用するため」のツールとしては非常に有効。
ただし、プロデザイナーを目指すなら学習優先度は低めになります。

Canvaを使用した案件も増えてきましたが、グラフィックデザインは色の問題でまだまだ使用が難しいのが現状です。
コーディング不要でWebサイトを公開できるため、フリーランスとして小規模なサイト制作を請け負いたい場合に大きな武器となります。デザインスキルと組み合わせることで、制作から公開までを一貫して提供できるデザイナーになれます。

最近はSTUDIO制作の案件も増えているようですね。クライアントでも簡単に編集可能なところが人気。
- Illustrator(基本操作とレイアウト)
- Photoshop(写真加工と表現力)
- InDesign(出版・エディトリアルを志すなら)
- Photoshop(Web用画像加工)
- Figma(UIデザイン・共同作業)
- Illustrator(ロゴやアイコン作成)
- SNS投稿や小規模案件 → 需要あり
- 副業や個人事業のデザイン → 需要あり
- 大手企業案件やブランディング → 不向き
デザインの世界で最終的に評価されるのは「どのツールを使えるか」ではなく「ツールを使って何を作れるか」です。
しかし、効率的にスキルを習得するためには、戦略的な学習順序が欠かせません。
- グラフィック志向なら → Illustrator → Photoshop → InDesign
- Web志向なら → Photoshop → Figma → Illustrator
- 副業やスピード重視の案件なら → Canva, STUDIOも視野に
あなたの目的に合わせたツールを選び、デザイナーとしてのキャリアを築いていくための一助となれば幸いです。

IllustratorとPhotoshopは、全機能を把握する必要はないので学習効率を上げることが大事です。